東山花灯路の開催に時期を揃えて、近隣の寺社仏閣も夜間特別拝観がスタートしています。
国の史跡・名勝の庭園、重要文化財も数多く、夜間ライトアップでも人気が高い「高台寺」に行って参りました。
産寧坂(三年坂)から二寧坂(二年坂)を下り突き当たったところの北側が高台寺の敷地です。
斜面の石段を上がって後方を振り返れば、今まさに暮れんとする京都の街が拝めました。
八坂の塔の周りの色が刻一刻と変わっていく様に しばし見とれていました。
昼は22度まで上がり かなり暑く感じましたが、夜になっても暖かく、そぞろ歩くには心地よい気温です。
高台寺は、豊臣秀吉の正室 ねね が亡き夫の冥福を祈るために建立した寺で、ご自身も晩年を過ごし、この地にて眠っておられるとされています。
正式名称は「鷲峰山(じゅぶざん) 高台寿聖禅寺」といいます。北政所(きたのまんどころ・ねね)の出家後の院号である「高台院」にちなんで「高台寺」とつけられたそうです。
通路や建屋、庭園が点々と灯りで照らされ、昼の姿とはまた違う趣きがあります。
臥龍(がりょう)池には、水面に周りの木々が鏡のように写りこみ、息をのむ素晴らしさです。 ことに紅葉の時期は絵のように美しいことでしょう。
方丈・北書院の中では、バロン吉元氏/寺田克也氏による「バッテラ展」と銘打つ絵画展が催されていました。両氏は漫画家、画家、イラストレーターとして活躍のアーティストです。
方丈には、両氏共同で公開制作された襖絵「黒龍図・白龍図」が奉納されており、得も言われぬ独特な存在感を漂わせています。あと百年くらい経てば全く違和感がなくなるのでは・・と思いを巡らせました。
方丈の前庭、波心庭では、プロジェクション・マッピングの映像と音楽が流され、幻想的なひとときを楽しみました。
今年は「平和」をテーマにした お寺所蔵の聖母マリアが幼いキリストを抱く姿を描いた16世紀のタペストリー「聖母子像に花鳥文様刺繍壁掛(ししゅうかべかけ)」がモチーフだそうで、波打つ白砂や白壁などに様々な色の光が投影されるのが夢の世界のようでした。
重要文化財に指定されている 霊屋(おたまや)。安置されている木像の地下に ねねさまが眠っていらっしゃるそうです。
竹林は美しく整えられていて、嵐山のように混んでないのが何よりです。
高台寺は東山の山麓にあり、山の斜面に立っているので、拝観順路を進むほど坂がきつくなってきて、ヒールの靴がアダになり、特に下りは一歩ずつ確認しながら進まざるをえず、それだけが悔やまれました。(泣)
帰り際、人の集まっている場所が気になり行ってみると、「狐の嫁入り巡行」なるものが行われていました。
昔の嫁入りは提灯行列で迎えられたらしく、時折見られる狐火の連なる現象が、嫁入り行列のように見えたことから、狐が嫁入りと呼ばれたようです。 高台寺の近辺でも狐火はよく見られ、京都では 吉兆(良いことが起こる兆し)として、縁起の良いものと捉えられているので、昔からの伝統行事かと思いきや、ごく最近の平成18年から始まったそうです。
内容としては、狐の面をつけた白無垢姿の花嫁さんが、人力車に乗り、知恩院から高台寺までを巡行します。最後は高台寺天満宮にお参りし、お寺の中に消えてゆきます。
人力車に乗った狐の花嫁が近づいてきて、眼の前に降り立ちました。
ただ面をつけていらっしゃるだけなのですが、何とも奇異な、幻をみるような、昔話の中に自分が入り込んでしまったような、不思議な気持ちに自然と誘われました。
この他にも多くの見どころがあり、大満足の夜間拝観でした。 一度にはとても語れないほどの魅力があります。
桜の季節、秋の紅葉は格別の美しさがあり、多くの方がその美を堪能されますが、あえて人の少ない時期を狙って ゆっくり巡るのも、風情や情緒がより深く味わえる とても良い愉しみかたでオススメです。 次はぜひ皆様がお愉しみくださいね。